電子薬歴とは

薬歴電子化にあたって

◆注意すべき点

平成11年4月の厚生省通達「診療録等の電子媒体による保存について」によって診療録、調剤録等の電子化が認められ、さらに電子保存する場合の3つの基準(真正性・見読性・保存性)と留意事項が示されました。留意事項については後述します。
薬歴についてはもともと紙媒体での保存を義務付けられておらず本通達にも記載がありませんがその重要性から同様の水準を確保するべきだろうと思います。また操作性やコストも勘案しセキュリティ対策がなされるべきです。
まず真正性を確保するということは誰が何時操作し記録したか分るようにしておきなさいということと考えてよいと思います。「薬歴情報システム」ではパスワードを入力し、一連の操作終了時、確定操作をすることにより使用者を特定し、なりすましを防止します。また操作の記録を自動生成し保存することで改ざんや誤操作による消去等を防止します。
次に見読性の確保とは薬歴情報をもらすことなく画面上で確認できること及び紙に印刷できるようにすることです。このシステムはレセコンとは別の薬歴専用に設計されていますので画面切り替え等の操作は最小限に抑えてあります。また誰にでも直感的に操作できるよう画面構成を工夫しました。
保存性については現在のパソコンのハードディスク容量を考えますと保存期間については問題ないと思われます。万一に備えデータのバックアップや無停電電源装置による停電への対処などが必要と思います。また長期間使用することを考えると汎用性があり信頼できるデータベースを使用するのが安全だと思います。

◆薬歴電子化のメリット

薬歴を電子化した動機は2つあります。まずレセコンから薬歴データを切り離して管理することでした。このことによりレセコンを他社製品に買い換えた場合でも内容はもちろん操作性もそのまま引き継ぐことができるようになります。次に私たちの薬局は比較的近距離に支店があり同じ患者さんが複数の支店を利用しているため、支店間での薬歴の参照機能が必須でした。相互に参照できるようになりファックスで薬歴をやり取りする手間が省け、患者さんが申告しない場合でもチェックもれがなくなりました。その他電子化による利点をいくつか挙げてみます。まず薬歴棚が不要なためその設置スペースが有効利用でき、薬歴の抽出、返却作業が省力化されます。また薬歴記録事項のうち、患者名、保険番号、医療機関名、処方内容などはレセコンから取り込むようになっているので薬剤師は指導内容、疑義照会内容などのみキーボード入力するだけでよく、薬歴作成の省力化になります。
データの二次利用が可能な点も電子化の大きなメリットです。私たちのシステムでは市販の医薬品添付文書データベースと連動させ、必要時添付文書内容を随時参照したり相互作用チェックできるようにしてます。面分業が進んだ現在、初めて調剤する薬も多いですがいつでも添付文書が確認できることは非常に安心感があります。
またカラー薬情2文書を薬歴システムから発行するようにしています。内容がその場で編集できるため患者さんに合わせ文字の大きさを変えたりすることも可能です。薬情2文書の内容を添付文書改正に合わせ更新するのは手間のかかる作業ですがネットワーク機能を利用し、本部で一括してマスターを更新することができます。これにより現場薬剤師の負担が軽減し支店間での内容の不整合等もなくなります。
またノートパソコンでサーバーにアクセスしモバイルで薬歴を参照することができるので夜間、休日の相談にも的確な指導が可能になりました。
実際の服薬指導では過去の処方薬検索をよく利用します。処方された薬がまったく初めてなのか、以前に服用経験があるのかがすぐに分るので指導の際大変参考になります。そして当然ですが過去の指導内容はキーボード入力されたものなので参照する際非常に読みやすいことがあります。意外に思われるかもしれませんが見やすく充実した薬歴ができていくためか電子薬歴システム導入以前よりも指導内容は格段に濃いものになってきています。

◆電子化によるデメリット

以前より指摘されていた電子薬歴の弱点として一覧が困難、保存できるデータ量に限界がある、キーボード入力が困難などがあります。保存期間については前述のとおり現在のパソコンでは一般的な薬局であればほぼ無制限に保存できるといってよいでしょう。一覧性についても薬歴専用に開発されたシステムであれば充分考慮されていると思います。キーボード入力は慣れれば手書きよりも早いはずですが、抵抗のある場合は手書き文字を画像として取り込むシステムも販売されています。すくなくとも私たちはキーボードから入力したほうが楽です。紙に出力した場合も見やすく、例えば最近遠方に引越しするため薬歴を希望する患者さんがありましたが来局以来の薬歴をプリントしてお渡しすることができ大変喜ばれました。
さてデメリットがなくなってしまいますが実際のところ調剤実務上はデメリットはほとんど感じません。データ量が増え、検索速度がやや遅くなりましたが、データベースを年次で切り分けることで対処することができました。
しかしデメリットとは言えないかもしれませんが紙薬歴にはない問題点もあります。それは冒頭に申し上げました薬歴の基準とともに示された留意事項です。電子薬歴では紙薬歴と比較した場合データの消去、書換えにはより一層注意が必要です。例えばシステム上でもパスワードを使うなどの対処をしていますが、それも操作終了時に確定操作をしなければ意味がありません。そのため基準を満たすためには薬歴システムを利用するだけでなく、その運用も含めて考えなければなりません。そしてどのようなシステムを用いどのように運用するか、どのように証拠能力を証明するかは使用者の自己責任であるとしています。要するにもっとも気になる保険上の取り扱いについては現時点では自分で証明する必要が出てきます。紙薬歴では問題とされなかったことでも説明責任が発生することは多少なりとも負担に感じられるかもしれません。

◆最後に

以上単独の薬局としてのメリットについて述べてきましたが、将来的にはIBISSで試行されたように薬歴の開示や薬局間ネットワーク等も仕様の一部を標準化することで可能になるでしょう。その際にはプライバシー保護に充分配慮したシステム構築がなされなければなりません。また疫学調査などにデータを利用する場合でもデータの収集および集計効率が飛躍的に向上するため、薬物治療の妥当性を検証し医療の質の向上に薬剤師が貢献できるようになるなど多くの可能性を持っていると思います。

カマヤ薬局 臼井 得雄